#094 ホームレス、障がい者、高齢者の人たちへの支援活動を推進する(2)

森川すいめい(精神科医)

聞き手/中野羊彦・上野周雄

 

こころの悩み

こころの悩みは、病気として処理されてしまうことが多い。そして、薬で症状を悪化させてしまうことが往々にして起きる。しかし、こころの悩み自体は、病気で起きるわけではない。悩みに寄り添うことが重要なのだ。これらの人たちの悩みに寄り添って行こう。

ホームレスの人がどうしてホームレスになったのか。なぜホームレスは生活保護を受けないのか?その多くは、高齢者であり、何らかの障がいを持っている。福祉に頼ろうとしても、傷つけられて断られる人。家族との関係で生活保護が受けられない人。全部私が悪いと自分を責める人。働きたいのに働けない……。自分で生きたいのに、社会の価値観で無理やり拘束されるのがいやで野宿を選ぶ人。

森川氏は、ホームレス者のなかでも、特に障がいを持った人たちを中心に支援する。認知症、うつ病、知的障がい、統合失調症、DV……。

2003年に、ホームレスの支援活動を行う「NPO法人TENOHASI」を立ち上げた。TENOHASIは、ホームレス状態の人々と炊き出しや夜回りで出会い、信頼関係を築きながら、医療・生活相談を通じてホームレス状態からの脱出支援を行なっていく。「ホームレス状態にある人自身」が自分の人生の主人公となれるようにその人生を歩むことを支援する。

ドラッカーとの出会いと実践

TENOHASIの運営をしているうちに、マネジメントの必要性を痛感した。パッションだけで動いていた頃は、「メンバーは心の熱い人たちなのに、何故わかってくれないのか」と思うことがたびたびあった。たまたまNHKでドラッカーの番組を見て、これだと思った。ドラッカーの本をかたっぱしから読んだ。

ドラッカーは、社会の全ての人が位置づけと役割を得る「自由で機能する社会」を追究した。そして、当初は企業のマネジメントを中心に研究していたが、社会的課題を解決するために、NPOに研究の重点を移すようになった。ドラッカーは「『知識社会における社会的な課題に誰が取り組むか』との答えは、政府でもなければ雇用主としての組織でもない。それは、新しく登場してきた社会セクターとしてのNPOである。」と言った。

行動を起こす

森川氏は、東日本大震災の支援をしている時に、これを身を持って体験した。東日本大震災では、国際NGOの「世界の医療団」のメンバーとして参加した。「眠りのコツ講座」を開催するなど、被災した人たちを支援しながら、現場の人たちの声をひたすら聴いた。そこで知ったのが行政と住民との意思疎通の少なさである。東日本大震災では、若い人が仕事を求めて地元から離れることが続き、これにより高齢化の速度が増した。介護と認知症の問題がより大きくなった。これに対して、行政は見守りと施設を作る予算をつけ、杓子定規に実行しようとした。しかし、住民たちは、見守りや施設を求めているわけではなかった。

住民たちは「認知症になっても農業ができる」ことを求めていた。森川氏は、これを見て、行政にはドラッカーのマネジメントができると変わることができると考えた。そして、行政と住民が話し合うワークショップを繰り返し開催した。これにより、行政と住民との意思疎通が取れるようになった。そもそも行政の強みは問題を一律に扱うことである。ゆえに一律に扱えない仕事をアウトソーシングすべきである。このうち、コミュニティの問題を解決すべきものがあれば、それはNPOにアウトソーシングすべきである。森川氏はこのことを学んだ。

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