#062 知識社会の働き方

谷崎敏昭(ドラッカー学会理事、上武大学大学院 教授)

人間の労働に対する考え方は、時代とともに変化し続けている。高度経済成長期、日本人の平均年間労働時間は2400時間余りで、休暇も少なく仕事は労働集約的で事故も多発していた。しかし、働く人々は今よりも希望に満ちていたのは確かである。多く働けば多くの報酬を手に入れることができて、豊かさを実感した。ドラッカーも称賛したように、経営者は労働者を会社の経営資源として大切に育ててきた。

近年グローバル化の影響で、労働力をコストと見立て、削減する方向にある。労働者を大切にしてきた日本の経営文化を捨てる必要はない。これから始まる知識社会で働く人々は、その成果を強く求められ高い労働生産性と質が要求される。次の時代の働き方を決めるのは私たちであり、私たちが納得できる働きやすい社会を構築しなければならない。さもないと知識社会は悲惨な社会になってしまう。

理想的な労働環境は、短時間で効率よく働き、多くの報酬を得る希望に満ちた働き方であろう。多くの余暇と多くの報酬を得ることは消費の拡大につながり、社会にとっても決して損にはならない。余暇はボランティアに費やす、と考える人も多いはずで健全なNPO組織を育てるためにも必要なことである。

 

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