#082 学び創造する経営者

藤井薫(大和製作所代表者)

 

経営者の中で、ドラッカーの考えを学び、それを自分の会社の経営に活かしている人は多い。ここでは、そのような会社の一つとして、大和製作所を紹介する。大和製作所は、日本の製麺機メーカーである。うどん、ラーメン、蕎麦の製麺機の製造・販売を行っており、業務用小型製麺機の分野において、日本でトップシェアとなっている会社である。

製麺機の製造・販売業として出発

大和製作所は1975年に創業された。現社長で創業者の藤井薫氏は、もとは川崎重工で飛行機や船舶の設計・製造に従事するエンジニアであった。藤井氏は、1975年、27歳のときに川崎重工を退職して独立したが、当初は工業用ロボットの設計を手がけていた。麺に関わるビジネスを始めたのは、76年のこと。会社が讃岐うどんの本場である香川県だったこともあり、製麺機の製作の依頼が多かった。そこで、製麺機ビジネスに参入したが、最初は製麺機の製造・販売のみだった。

藤井社長は、製麺機ビジネスの本質、それは「安全で美味しい麺ができる製麺機をつくる」ということと定義した。それこそ寝食を忘れて一心不乱に研究に没頭した。その結果「これは!」という納得のできる麺が完成。そして、そんなうどんが打てる製麺機を開発、続けてラーメンやそばの製麺機も同様に開発し、どの製麺機も順調に売れていった。
美味しい麺が打てる製麺機なのだから、当社の機械を導入した店は、当然成功すると思っていた。ところが店によって業績はバラバラ。なかには閉店を余儀なくされたところもあったほどだ。商売には、味だけではない何かが必要なのだと悟った。

「麺専門店繁盛支援会社」としての事業推進

そこから、大和製作所は顧客のために何ができるかを真剣に考えるようになった。その中で掴んだコンセプトが、「麺専門店繁盛支援会社」だった。それまで大和製作所は製麺機を製造・販売する会社というつもりでいた。しかし、お客様(製麺機械を購入される店主)が求めているのは、製品の良さという視点ではなく、「どうしたら繁盛するか」そちらのノウハウだと気づいた。20年前に、会社の使命を「麺専門店繁盛支援会社」であると定義したことで、会社の形が大きく変わった。

まずは、365日のお客様サービスを考え、365日メンテナンスを実施した。飲食店は土日など休日ほど忙しいからその分、機械が故障する可能性が高くなる。「麺専門店繁盛支援会社」ならお客様の繁盛に支障が出てはならない。365日メンテナンスは、お客様は喜ぶが、社員の方は大変だ。実際はじめると社員は、何人か辞めていった。しかしお客様の喜びの声を社員が実感して定着していった。そこから、自分たちが「麺専門店繁盛支援会社」であると自信と誇りを持ち始めてくれた。お客様は選ぶもの、選んだお客様に喜んで頂く。

15年前には、「麺専門店繁盛支援会社」として、麺の学校も開校した。理由はニーズが変わったからである。昔のお客様(店主)は、プロだったが、今はアマチュアになってきた。麺の学校では、生徒さんからの課題や質問に答えなければならない。亀城庵という直営のうどん店を作り、麺や経営のノウハウを研究した。

 

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