#005 ドラッカーの大海に漕ぎ出す

山崎真一(東海大学医学部付属病院 臨床検査技師)

 

私とドラッカーとの出会いは、社会人になり組織における「面倒なこと」に目を瞑れなくなってきた時期に、ふと、書店で手にした上田惇生先生編訳の『マネジメント【エッセンシャル版】』であった。それから、すでに15年が経ち、その間本書をバイブルに、ときに『ハーバード・ビジネス・レビュー』での「ドラッカー特集」を手にし、いろいろな局面を乗り越えて来た気がする。

時が経ち、2年ほど前に、上田惇生先生の講演をお聴きする機会に恵まれた。すでにカバーもなく、コーヒーの染みまで付いてしまっている『マネジメント』を手に、講演後にご挨拶し、貴重なサインをいただいた。その頃から、『マネジメント』以外のドラッカーの著書を手に取り始めたことで、ドラッカーという大海原に小舟で漕ぎ出すことになってしまった気がする。

そこでの課題は、このドラッカーの著書はいったい何冊あるのか、そして、何をどう読むべきなのかという、素朴でありながらも困難なそれに出合ってしまったことである。

そんなとき、導かれたように、井坂康志氏の講演を聴く機会に巡り合い、その中で紹介いただいた『ネクスト・ソサエティ』などいくつかの書籍を読み始めることにした。その後、所属している団体にて、井坂氏に講演をお願いする機会があり、その際にいろいろとお話したことが、ドラッカーがまだ脈々と生き続けていることを知るきっかけとなった。

大海原でも、都会でも、自分が目指す目的地にたどり着くためには、いくつかの準備が必要であろう。大海原のどこに、何があるのかを示す地図という「知識」、目的地の方向を指し示す羅針盤という「道具」、そして、どうやって進んでいくべきかという手段を決める「行動」。

この「Drucker Studies」には、ドラッカーという大海原から、「自分のためのドラッカーのひと言」という目的地へたどり着くために必要な、「知識」と「道具」が揃っているのではないだろうか。そして、そのときの自分が変化していくように、「自分のためのドラッカーのひと言」も、無限に変化していく。まるで螺旋階段を登るように、積み重ねることで同じ言葉が変化をすることもある。

この「Drucker Studies」をナビゲーターとして「行動」してみる。

決してドラッカーに会ったこともなく、クレアモントに通ったわけでもなく、深く学んだわけでもない、そんな私のような「ただ単にドラッカーに魅せられた」人々の、良きナビゲートをしてくれるに違いない、新たな「宝物」を見つけてしまった。

  • ドラッカー学会 Drucker Workshop