#008 優れた社長は「自分の言葉」を持っている
森憲一(コンサルタント、株式会社サードステージコンサルティング代表取締役)
仕事柄、多くの社長から聞かれる質問がある。
「どうしたら、売り上げが上がりますか?」
私の答えは、一つしかない。
「社員が、売り上げを上げたいと思うこと」だ。
成果を出し続ける組織の社長は、このことをよく理解している。
彼らの会社では、社員が自ら考え行動し、目標に向かって一丸となっている。
社員たちが、「売上目標を達成したい」と強く感じているからだ。
社長の仕事は、人を動かすこと。
人を動かすためには、
「させる」のではなく、「したいと思わせる」ことが重要だ。
人を動かすために最も重要なのは、言葉だ。
といっても、上辺だけの言葉をいくら並べたところで、人は動かない。
優れた社長は「自分の言葉」を持っている。
仕事における課題や問題を言葉に置き換え、書きとめ、語り続け、他者の言葉に耳を傾け続けることによって、言葉を磨いている。
ドラッカーは言う。
「経営管理者は言葉を知る必要がある。言葉とは何であり、何を意味するものであるかを知らなければならない。そしておそらく何よりも、人に与えられた最も貴重な能力としての言葉を尊重することを学ばなければならない」(『現代の経営』)
経営管理者は、話し言葉や書き言葉によって人を動機づける能力がなければ成功しえない。
人は本来、誰もが自分の言葉を持っている。
100人いれば100通りの人生があるように、人は誰もが独自の価値観や想いを持って生きている。
だからこそ、私たちは自分の内にある言葉を発見し、大切に育てなければならない。
自分にしか語り得ない言葉こそが、人の心を掴み、人を動かすのだから。
私は、このことを教えてくれたドラッカーに、心から感謝したい。