#055 「全人格的な作り変え」を促すパワフルな問い
鮒谷周史(株式会社ことば未来研究所 代表取締役所長、ビジネスメルマガ『平成進化論』発行者)
「あの出会い」で人生を大転換
大変ありがたいことに、2018年5月12日ドラッカー学会にて、講演する機会を頂戴いたしました。古くからお付き合いのある方は御承知の通り、ドラッカー著作(群)は私の人生観や仕事観、ビジネス観に多大な影響を与えてくれました。ドラッカーとの出会いによって救われ、人生を大転換させてもらったのだから、このご依頼は素直に嬉しく、また光栄で、(面倒くさがりの私は、基本、ほとんど外部講演を行ってこなかったのですが)このお話については喜んでお引き受けさせて頂きました。
このたび、こうしたお話を頂戴し、改めてドラッカーの有名な問い「私は何をもって憶えられたいのか」について考えてみたのですが、考えれば考えるほど、深く本質的です。
※正確な言葉は以下の通り。
「私が十三歳のとき、宗教の先生が、何によって憶えられたいかねと聞いた。誰も答えられなかった。すると、今答えられると思って聞いたわけではない。でも五〇になっても答えられなければ、人生を無駄に過ごしたことになるよといった」(ドラッカー名著集『非営利組織の経営』)
これまで幾たび、この問いを自らに問うてきたか分かりませんが、時を経て、この問いを投げかける回数が増えていくほどに、目指すべき場所が進化(というよりも深化)し続けていきました。
「自らが巨人になれる世界」
この質問によって逆算思考が生まれ「人生における可処分時間」をどこに傾斜配分するか、が決まってくることとなります。常に問いかけ続けるうちに、結果として、ゆっくりと長い時間をかけて「全人格的な作り変えが生じる」わけですから、大げさではなく、とてつもなく力のある問いであると考えています。
この質問を重ねることで、目指すべき「頂(いただき)」がどんどん高くなり、それでいて納得できる、しっくりくる表現に近づいてくることとなるはずです。それに従い、より広く、より高く、アンテナが立つようにもなるでしょう。こうして一挙手一投足を自らが「頂」に近づくための行動にしていこうとする意志が強く現れるようになるのです。
それは(良い意味での)背伸びを自らに促すこととなります。こうしたストレッチを長い間、続けているうちに、十数年先、あるいは数十年先になるかもしれないけれども、この延長線上に、「自らが巨人になれる世界」が続いているのだと信じられるようにもなりました。
ドラッカーのこの言葉に触れた初めの頃はその思いは「予感」に過ぎませんでしたが、やがて「実感」となり、今となっては「確信」に変わりつつあります。長い時間をかけて、大きな自信と自尊心をももたらしてくれる問いでありました。 そんなお話も講演で触れられればと思っています。