#020 自分の強みは「つなげること」
松澤斉之(日本工芸株式会社 代表取締役、株式会社フロイデ エグゼクティブパートナー)
15年近く前にドラッカーの『経営者の条件』を手に取った記憶がある。
その後もキャリアの節目で、いくつかの書籍を読み、ビジネスパーソンとして多くの影響を受けている。
その中で、とくに次の2つのセンテンスは長い時間、頭の中に宿っている。
「ビジネスの目的の正しい定義はただひとつ。顧客を作り出すことである」
初期に目にした際には「そんな単純なものか?」と疑問を持って読み飛ばしていたのが正直なところだ。
だが、しばらく「維持・成長する組織とそうでない組織では何が異なるのか」という疑問を抱えてもいた。
新規事業支援で100社、起業家志望者には5000名とお会いし、新しい販路ECに取り組むメーカー2000社以上の取り組み支援などにかかわるなかで、改めてこの問いを考え直すタイミングを持つことになった。
そして、共通する点として、この言葉の存在を思い出した。
すべてのトライが成功するわけではない。しかし、成長を目指し、顧客を作り出す取り組みを継続する組織体が、結果としてノウハウを蓄積して成功確率を上げていく。そのことを実感している。
それから、もうひとつ。
「何事かを成し遂げるのは、強みによってである。弱みによって何かを行うことはできない」
以前参加した学会の分科会で、強みについて討議した際、「強みというのは意識せずにうまくやれること、自然にできること」ということを学んだ。
この言葉のおかげで、マネジャーとしての立場では部下やチームメンバーが本来的にどんな強みで貢献できるかを考える習慣を持つことができた。
また、自分の強みは「つなげること」。これを常に意識し成果を出すため、誰とどう組んだらいいのかを考え行動する大きなきっかけになっている。
さて、自身のビジネスでは、ここ数年で多くの職人さんたちに出会い、その製法や素材へのこだわり、商品に込めている思いなどに、とても共鳴する部分が多かった。そこで日本の工芸品を世界に展開する日本工芸株式会社を立ち上げ、「挑戦する精神ととともに成長する」というビジョンのもと、新しい顧客づくりのお手伝いに取り組んでいこうと思っている。
今後もドラッカーの言葉をビジネスや人生の一つの指針とし、仲間とともに学び、さらに成長していきたいと思っている。