#010 何をみるか

奥山龍一(共愛学園前橋国際大学教授)

 

本来、ここに文章を書く資格はないが、友人から貴重な機会を与えられたので、普段考えていることを述べたいと思う。

かつて宗教家は教会者でなく、キリスト者であれと説いた。

かつて哲学者は死の静謐から、今存在することを問うた。

かつて思想家は主義ではなく、マルクスの幻想論を語った。

私たちはそこに宗教を観るか、哲学を覧るか、思想を視るか。

いや人間の思惟と営みをみる。

そこには、どのような人間が想定されているか。

土をはむ農耕者か。

地を這う労働者か。

卓越した経営者か。

高度知識労働者か。

赤子を抱える派遣労働者か。

彼があなたに語る言葉は何か。

「顧客」「マーケティング」「マネジメント」「リーダーシップ」「イノベーション」「フィードバック」「知識」「真摯さ」―。

今、私たちはそれらの言葉たちを術とする。

その言葉たちを拠り所として、日々の生活、辺境での出来事、平和への祈り、民族の拮抗、帝国の崩壊と再来への振る舞いを私たちは知る。

今立つこの場所でしかみえない事ども。それを手繰る力を彼が与えてくれる。

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