#049 「第二の人生」を生き切る

飯田利男(ドラッカー学会会員)

 

 

定年後に何が起きるか

ドラッカーは第二の人生に備えるべきと書いています。それに直面した私の体験をお話ししたいと思います。組織人の定年後に何が起きるのかです。

昨今の企業は、定年後、延長期間があり、給与は下がり、権限がなくなり、補助的な仕事が与えられると考えられています。

でも、私においては、現実はとんでもなく違っていました。

私が2017年3月末に定年を迎え4月1日に出社した瞬間から状況は一変しました。まずメールが激減、毎日200のメールがいきなり10通に減り、半年も経つと1通程度に--。

会議招集もありません。当然、仕事などありません。毎日やるべきこともなく、朝から定時まで座って過ごすだけです。拷問に近いことで、同期の中には鬱になる人たちも結構いました。これが現実です。考えてみると、これはまだいい状況で、完全リタイヤしたら行くところすらなくなるのです。

で、私はどうしていたか? 定年当初は、私も同期と同じように仕事などありませんでしたから、今までビジネスの中でドラッカーの実践したことをまとめたり、若い頃に覚えたコンピュータ言語でマネジメントシステムをプログラミングしたり、ゴルフにドラッカー・マネジメント導入したりして、結構楽しく過ごしていました。

40代から「定年後」は始まっている

 

「ゴルフ・プロジェクト」は運良く成果が上がり、出版社からオファーを頂きましたので、出版原稿に追われ、鬱は避けられました。さらに半年後、トップから若い世代に接待術の指南役をせよとのミッションを賜りました。現役の時、毎晩真面目に遊んでいたので、それが私の強みと映っていたようです。トップに言わせると人脈作りと接待が私の強みだそうです。知らなかった(笑)。

何を言いたいかと言うと、第二の人生をミッションを持ってエンジョイできるかどうかは、遅くとも40代半ばくらいから何かを真剣に真面目に実践して他に追随を許さないほどやり切ることだと思うのです。

本を読んで理論を学んで終わるのではなく、真剣に実践して理論と実践の結果と照合し、理論と現実の違いと、どうやって解決したのかを、後進に伝えられるほどになる必要があります。

今、還暦を迎えて、こうして日々楽しく生きられるのは、ドラッカーと40代で出会い、実践の中で井坂さんを始め多くの方々と出会い、そのための場を得たからだと思います。井坂さんの『ドラッカー流 フィードバック手帳』にもありますが、第二の人生をエンジョイできるかどうかは40代で、第二の肩書となることを始めているかどうかです。

還暦の説教と映るかもしれませんが、若い世代の皆さんは、ドラッカーの理解だけでなく、是非、実践をやり切って、実体験として理論と現実の違いや、それを解決する自分のメソッドを作り込み、それを世に広めていただきたい。

僭越ながら、まずは私がそれを実践したいと思います。

 

 

 

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