#088 はみだし公務員の挑戦(3)

円城寺雄介(佐賀県庁勤務)

取材/中野羊彦・上野周雄

先憂後楽による、更なる社会貢献へ

円城寺氏は、その後、2014年に情報・業務改革課の所属になり、地域のICT化推進やオープンデータ業務を担当した。ここでは、救急現場を“見える化”して変革した経験から今度は行政や政治も“見える化”して変革できないかと思い、オープンガバメントといった点に力を入れて、行政の透明性を高め住民の参加や協働を促す業務を推進した。そして、2016年には政策課の所属になり、より広い立場から、県政のプラスになることを自分で考え、道筋をつけて下支えする役割を担っている。

円城寺氏の座右の銘の一つに「先憂後楽」がある。「世の中の課題に先んじて取り組む」という意味である。現代の日本は、高齢化をはじめとして様々な課題が出ている。歴史好きの円城寺氏は、先憂後楽の例として、幕末の佐賀藩藩主、鍋島直正を揚げた。彼は、幕末の日本の危機的状況にあって、佐賀藩の藩政改革を成し遂げ、西洋の技術を貪欲に取り入れた人である。アームストロング砲や蒸気船を独自に作り上げた。

天然痘を根絶するために、オランダから牛痘ワクチンを輸入し、長男の直大で試験した後、大坂の緒方洪庵にも分け与えている。このような活動の結果、明治維新後、佐賀藩は、「薩長土肥」の肥前として、数々の有為な人材を明治政府に送り込んだ。円城寺氏も「先憂後楽」を座右の銘として、現代日本の課題に先んじて取り組みたい。

一人称で考える

救急のiPad導入は、患者を最適な病院へ迅速に運ぶためのツールではあるが、そもそも救急患者の発生自体を減らすことができないだろうか。昔は怪我や事故で救急車に乗ったが、高齢化の進展により、今は病気で運ばれるようになった。病気で運ばれる人の増加は、脅威ではなくて、機会・チャンスである。突然のケガや事故は予測できないが、病気で倒れる前にはほとんどの場合、数日前から体の違和感や兆候が見られるからである。

そこで、ウェアラブルのツールなどで体調の異変を見逃さない仕組みを作る。例えば、血液の成分をリアルに計測し、24時間以内に脳梗塞を起こす等の予兆を見る。こういうことをやらないと医療費が増大する。社会保障費が増加する。ここを何とかしたい。また、かつての佐賀藩が先端技術を取り入れたように、ドローンでAEDや薬剤を運んだり、ロボットや人工知能を活用することも考えたい。こういった取り組みは県庁の仕事ではないので、有給休暇などを使って個人的な活動として行っている。ドローンやウェアラブル機器の活用では、一般社団法人EDACを有志と一緒に作り、そこのCEO(最高経営責任者)も務めている。そして、総務省のIoTの実験に参加している。

円城寺氏は、自分の考えを広く伝え、多くの人に「先憂後楽」のバトンを渡すために、自分の体験記『県庁そろそろクビですか?「はみ出し公務員」の挑戦』を書いた。ドラッカーの言う「真摯さ」は、なすべき課題に、きちんと向き合い、自分の課題として一人称で考えることである。円城寺氏は、これからも、自分のなすべき社会課題に一人称で向き合い、組織を超えた様々な人と連携しながら、より良い未来社会をつくりたいと語った。

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