#030 ドラッカーに学んだ3つの言葉
白石良男(コクヨ株式会社 ステーショナリー事業本部 広報宣伝部長)
僕はドラッカーが好きだ。そんなに何度も読み返してはいないけれども、読んでいて心地よい。すっと心に入ってくる感じだ。自分の気持ちを豊かにしてくれて、働くうえでもマネジャーとしての役割を果たすために役に立ったいくつかのキーワードがある。
最初に見つけたことは、企業の存在意義を「顧客の創造」としたこと。競合との戦い方だけにフォーカスされる戦略論に辟易としていたところに、明るい未来を照らしてくれた。
それからは、何をするにも「顧客の創造に繋がるか、貢献するか」が判断軸になった。
最も衝撃を受けたのは、必要な資質が「真摯さ」であると断言されたこと。「真摯さ」という言葉は、僕に勇気をくれた。一生懸命に働くことが好きだったが、上司の顔色を窺ったり、余計な駆け引きは好きでなかった。自分の立場を利用して、パートナーを貶めたり、自社や自己の利だけを求める同僚にも反感を感じた。そういうことが嫌だったため、発言はストレートに、フェアに仕事をしたいと考えていたし、完ぺきではないけども実行していた。よく「バカ正直」と言われてはいたものの、それを「真摯さ」と置き換えれば、上質なポリシーとすることに気がついた。
「強みに集中する」。これが最も難解だった。「強み」という言葉がいけないのではないかと思う。思い込み過ぎなのかもしれないが、「強み=唯一無二のもの」だと考えていたため、自分の強み、他者の強みをなかなか見つけられずにいたし、人の良いところを見つけられない、ひどい人間だと感じてのコンプレックスでもあった。
しかし「特徴」と考えると気が楽になる。「Aさんは、○○な人ですね」「○○が好きですね」「よく○○するね」というように、他者との比較をせずに、見えてくることを言葉にすれば「強み」の発見につながる。これは最近気がついたことで、ドラッカーとの出会いから10年以上かかったことである。
そのように考えると、全ての人が強みを活かし、社会や組織に貢献できる幸せな映像が見えてくる。現実はそうなってないことも多いけれども、そのような世界を周囲に築いていきたい。