「われわれの計画は何か」

計画は「手段」である

ドラッカーにとっての「計画」とは、明日への指針であって、変更不能な原則ではない。活用すべき「手段」である。あくまでも手段であり、変更は宿命である。

計画は、現実に合わせて柔軟に対応することが求められる。そのうえ、過去も現在も未来も縛らないものでなければならない。

つまり計画とは、行くべき場所と行き方についての見解の一つにすぎない。いかに優れた計画も、意思決定やリーダーシップの代替物ではありえない。ドラッカーはこう述べている。

「計画は、未来が現在と異なるとの認識からスタートしなければならない。計画がリスクを回避しうると素朴に信じられているが、それほどに危険な妄想もない。計画はリスクを創造し、リスクを引き受ける」(『変貌する産業社会』)

「目的は何か、何のためか」

計画の初めに行うべきことが、「ミッション」を確認し、目標を設定することである。とくに非営利組織の場合、組織の存続を確定する一義的な尺度がないために、ときにミッションの高邁さに陶酔する傾向がある。だからこそ企業以上の熱意をもって、「目的は何か、何のためか」を問い続ける必要がある。

計画にあって、何に資源を集中するかを示すものが、「ゴール」である。ドラッカーは自らの体験から、「ビジョン」「ミッション」から「ゴール」に至る筋道として、次のような例を挙げる。ある市立美術館についてのものである。

●ビジョン:世界の多様な美術品を市民の心の糧とする街
●ミッション:市民と美術品との触れ合いの増大
●ゴール1:美術品の保全と収集
●ゴール2:展示、講座、出版による啓蒙
●ゴール3:来館者数の増加
●ゴール4:設備の充実と運営の改善
●ゴール5:財務基盤の確立

途中で行動の前提が変わってしまったり、成果があがらなかったり、あるいは意外なところからチャンスが現れたりすることもあるだろう。

そんな不測の事態が日常だからこそ、計画に意味がある。計画の最大の利点は「修正できること」である。

5つの問いを何度も繰り返す

ここでもう一度、「最も重要な5つの質問」を振り返ってみる。

1)「われわれのミッションは何か」
2)「われわれの顧客は誰か」
3)「顧客にとっての価値は何か」
4)「われわれにとっての成果は何か」
5)「われわれの計画は何か」

この「ミッション」から「計画」に至るまでのプロセスは、何度も繰り返し行われるべきものである。繰り返し考え抜かれるべきものである。忘れてはならないのは、「成果は外にある」ということである。

 

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