8つの目標
事業の両輪はマーケティングとイノベーション
事業を行うにあたって、目標を設定する必要がある。企業の存続における重要な分野として、ドラッカーは次の8つの分野を挙げ、それぞれに目標が必要であると説く。
1)マーケティング
2)イノベーション
3)人的資源
4)資金
5)物的資源
6)生産性
7)社会的責任
8)利益(条件としての利益)
第1は、「マーケティング」である。現在、われわれが事業で成功しようと思えば、まずマーケティング抜きでは考えられない。「販売」ではなく、「マーケティング」である。マーケティングとは、「自社が売りたいもの」ではなく、「顧客の求めるもの」から事業をスタートすることである。
第2は、「イノベーション」である。将来にわたって成長し続けようと思うならば、今のやり方を変えていかなければならない。ならば、意識的に変革を起こさなければならない。そこでイノベーションの目標が大切になってくる。
ドラッカーの「マネジメント」では、「マーケティング」と「イノベーション」を事業の両輪とする。両輪がうまく機能するかどうかで、企業の成長は決まってくる。
必要となる経営資源
マーケティングの目標とイノベーションの目標を実現するには、経営資源が必要となる。これが第3から第5までの目標、「人的資源」「資金」「物的資源」である。これら経営資源をどのように調達して、どのように用いて、どのように開発していくかについての目標である。
第3から第5までの目標は、「どのように調達して」「どう用いて」「どのように開発していくか」の3段階について目標がなければならない。たとえば「人的資源」でいうと、次の3段階である。
●どのような力を持った人材を、どこからどのようにして採用するか。
●その人材の強みを生かすには、どのように働いてもらうべきか。
●その人材の能力を、どのように開発して成長してもらうか。
第6は、「生産性」である。経営資源が生産的に利用されているかどうかを判断する指標を持ち、そのうえで目標を設定しなければならない。1人あたり、時間あたり、あるいは資金についてなど、それぞれの観点からの生産性がある。
社会的責任
第7は、「社会的責任」である。企業をはじめとする組織は、社会の中に存在していることで、社会に対して何らかの影響を与えている。製品を作れば、工場から廃棄物が出る。騒音も出ているかもしれない。最低限、社会に対して害をなさないために、どのような目標をもって事業を行っていくのかを考えなければならない。
また、「社会は何を求めているのか」を考え抜いていくなかで、組織が自らの使命を見いだすことができるかもしれない。その観点からも、社会的責任についての目標が必要になる。
必要利益の考え方
これらの目標によりながら事業活動に取り組む中で、どの程度の「利益」をあげられるかが、第8の目標である。「結果として」という位置づけであるため、最後に挙げられている。
そもそもドラッカーは「利益」を「目標」ではなく、「条件」としてとらえる。彼の考える「利益」とは、将来イノベーションを起こし、マーケティングを展開していくのに必要な資金である。それがどのくらい必要かによって、利益目標が決まってくる。
その意味では、同業他社との比較による目標などは適切とはいえない。もちろん事業全体の目標に合っていないのならば、漠然とした数値的な利益目標は意味をなさない。
ドラッカーは「必要利益」という言い方をする。他の7つの目標とともに、総合的な視点をもって目標を設定していかなければならない。