ドラッカーの神髄「フィードバック」
「フィードバック」とは
「フィードバック」という言葉は、われわれの生活のなかで、さまざまな意味合いで使われている。たとえば、自分が提示した意見に対する相手からの反応は「フィードバック」と呼ばれる。
より概念的な意味でいうと、内部と外部の間のエネルギーのやりとり、あるいは入力と出力の間のエネルギーのやりとりによる反復行動は「フィードバック」と呼ばれる。生物でいえば「呼吸」がこれにあたる。
では、人間社会における重要なフィードバックは何だろうか。「対話」である。
対話は、人の話に耳を傾けることから始まる。顧客の声に耳を傾けることの大切さは、ドラッカーが幾度となく強調することである。こうした「対話」の重要性と、ドラッカーが世界的な経営コンサルタントとして名をなしたことは、決して無関係ではない。
ドラッカー思想と「フィードバック」
ドラッカーの思想をあえて一文で表現すれば、「フィードバックせよ」に尽きる。
ドラッカーは、「マネジメント」の両輪は「マーケティング」と「イノベーション」であると考える。これらの概念は、いずれも「フィードバック」という観点から、次のように解釈することができる。
「マネジメント」とは、組織と人間社会とのフィードバックである。自らの組織がどのようなミッションを持ち、いかなる成果をもって、人間社会と関わっていくか。組織と人間社会との“対話”と言い換えてもいい。
「マーケティング」とは、顧客とのフィードバックである。顧客と対話し、求めるものを知り、商品やサービスをもって応えていく。顧客に耳を傾けて対話を成立させることで、「自分が売りたいもの」ではなく、「顧客の求めるもの」を知るのである。
「イノベーション」とは、人間社会における未来とのフィードバックである。今ここにある社会を観察し、対話していくことで、未来に必要とされるものが見えてくる。イノベーションというと刷新のイメージが強いが、フィードバックを経ていない新しさには意味がない。