「われわれのミッションは何か」
成果に関わる行動を促す
第1の問いは「われわれのミッションは何か」である。
組織とは、自然の産物ではない。人の意思と尽力があってはじめて組織は機能する。「ミッション」とは、その組織の存在理由である。存在する目的である。この質問は「何のために存在しているのだろう」という根源的な問いである。
したがって、この問いに答えるには熟慮を要する。ドラッカーの他のコンセプトにも共通することだが、とにかく考え抜く姿勢が要求される。
いかに多忙であっても、いや多忙であるからこそ、ミッションは小手先で処理するわけにはいかない。誰かに代わりに考えてもらうこともできない。そもそもミッションはアウトソースできない。
きちんと時間を確保して、メモを取りながら、考え抜くことである。ミッションを考え抜くにあたって、ドラッカーはいくつかの助言をしている。
一つは、「Tシャツのプリントのような、すっきりとわかりやすいものがよい」というものだ。加えて、「明日への一歩ではなく、今日何をするかに関わるものにせよ」である。
美しい言葉を掲げることより、成果に関わる行動を促すこと。それが「ミッション」の意味である。
ミッションは事業に命を吹き込む
ミッションは、私たちに仕事の価値、そしてエネルギーを与えてくれる。仕事の価値とエネルギーを与えてくれるものに取り組むことが、経営者の第一になすべき仕事である。
ミッションとは、内面から湧き上がる力である。ミッションがあることによって、働く人たちのコンセンサスも形成されやすくなる。コンセンサスができることで、集中できるようになる。
事業で成果をあげるには、集中しなければならない。これはドラッカーがよく言うことである。限りある資源を分散させてしまうと、成果はあがりにくくなる。ミッションを中心に、集中できるものを見つけなければならない。
集中できるものを見つけるということは、結局、自分たちは何を目指すのか、何を実現するのかという問題に戻ってくる。