「フィードバック分析」の効能

ドラッカーは「フィードバック分析」の効能について、次のように述べている。

「こうして2、3年のうちに、自らの強みが明らかになる。(中略)さらに、自らが行っていることや行っていないことのうち、強みを発揮するうえで邪魔になっていることも明らかになる。それほどの強みではないことも明らかになる。まったく強みのないこと、できないことも明らかになる」(『プロフェッショナルの条件』)

そのうえで、次の7つのことを指摘している。

「強み」への集中

発見した「強み」に集中する。「強み」は一度発見できれば意識できるようになる。

「強み」の培養

発見した「強み」を培養する。「フィードバック分析」の結果、さらに伸ばすべき技能や知識が何であるかがわかる。そのうえ、これから身に付けるべき技能や知識、現時点における技能や知識の欠陥にも気づくことができる。自分の頭で考えるだけでは、そのような情報を手に入れるのはまず不可能である。

知的傲慢の矯正

仕事のできる人ほど、他分野の知識を軽視してしまう傾向がある。たとえば、大学において研究者が事務職を下に見たり、医療の現場において医師が看護師を下に見たりするようなことである。そうした知的傲慢は無知の元凶ともいえるもので、正さなければどこかでつまずくことになるだろう。

成果の阻害要因を知る

成果の阻害要因となる悪癖を知る。特定の問題が頻発するなら、それは構造的要因であることが多い。「フィードバック分析」によって悪癖に気づいたら、改めなければならない。

人への対し方を知る

仕事で問題が起こるのは、単に簡単な礼儀を知らないからかもしれない。敬語の使い方を知らないだけかもしれない。メールでのコミュニケーションにおける言葉選びが、相手の不快感を誘う原因となることも多い。

できないことに気づく

自分にいかなる能力が足りないかに気づく。「フィードバック分析」を続けると、時間と労力の割にまったく成果があがらない分野が浮かび上がってくる。人がごく当然のようにできることでも、自分にはできないことなど山ほどある。

できないことを捨てる

「強み」に集中するために、 できないことを捨てる。できないことを無理して並のレベルまで引き上げる努力は、強みに集中するための時間を奪うことになる。

 

このように、「強み」を発見し、培養していくとともに、阻害要因を知り、無駄なものを廃棄していく。これを繰り返して「強み」により集中し、それもとに自らを築き上げていく。これが「フィードバック分析」によるセルフ・マネジメントである。

 

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