もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら

岩崎夏海/新潮文庫(原著はダイヤモンド社)

マネジメントの本質を語る色褪せることのない名著

一大イノベーションを巻き起こした画期的な小説です。高校野球の女子マネージャーが「マネジメント」の原則を知り、チームの鍛錬と甲子園出場に生かすという物語。ドラッカーの『マネジメント【エッセンシャル版】』をもとにしています。

野球部のマネージャーと会社におけるマネージャー、言葉は同じながら機能は違うように見えるかもしれません。それでも、人をして成果をあげさせなければならない点では共通しています。マネジメントによって機会にどのように対処しようとしているのか、そのことによってチームをいかなる方向へ導こうとしているのか。変革の意味と可能性を考えさせます。

女子マネージャーの主人公が、「野球部を甲子園に連れて行く」というミッションを自らに課し、偶然出合ったドラッカーの書物を片手にチームを運営します。しばしばドラッカーの言葉が引用され、それに対し刺激的な解釈がなされ、実行に移されていきます。現実へのドラッカーの適応方法を明快に示し、徹底して身近なチームのマネジメントに投げ戻す真骨頂ともいえる作品です。

人間社会にはさまざまな障害があって、そこからドラマが形成されるものです。そうしたドラマから、マネジメントは困難を乗り越えさせてくれるという一面も見えてきます。未曽有の危機によって、社会における問題が増幅されている今、マネジメントの新たな適用が急務となっています。折り重なる危機を乗り越えるために求められる姿勢や考え方とは何か。これからの選択肢を考えるうえでも、本書は座標軸となる一冊です。

 

  • ドラッカー学会 Drucker Workshop