ドラッカー入門(新版)

(上田惇生・井坂康志/ダイヤモンド社)

 

著者の上田惇生はドラッカー著作のほぼすべてを翻訳した第一級の研究者であり、ドラッカー本人からも「私の分身」とされた。井坂康志は、晩年のドラッカーにインタビューし、新たな時代的背景からドラッカーを再解釈する研究者である。

本格的な入門書である。「入門」と銘打ってあるが、内実は「出門」と言ってよいほど内容は濃い。というのも、本書は「人、思想、業績」という正面からドラッカーを捉えようとしているためだ。

ドラッカーを一本の大樹になぞらえれば、本書が対象とするのは枝や葉ではない。地中深く張られた根から、巨大な幹がどのように形成されたかを考察対象としている。「ドラッカーとは何者なのか」「何をしようとした人なのか」「どのような考えが背景にあって活動していた人なのか」という大きな問いに応えようとしている。

全編を通して、ドラッカーという人物が暗黙的に持っていた思想的な基底が少しずつ明らかにされていく。ここまでドラッカーの全体像にこだわる本は、世界的に見ても希有といってよい。「ドラッカーの全体像を正確に理解することによってのみ、その知的遺産を現代から未来に継承し、発展させることができる」。そうした信念が、本書には一貫して流れている。

決してやさしい本ではない。だが、糸井重里氏や、西條剛央氏をはじめ、本書を正しい意味における入門書として評価する人も少なくない。ドラッカー山脈に本格的に分け入ろうとする方にお薦めしたい一冊である。

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