ドラッカーと私

(ボブ・ビュフォード著、井坂康志訳/NTT出版)

 

本書はドラッカーに学んだ事業家の実録である。著者のボブ・ビュフォードは、もともとケーブルテレビ会社の経営者であり、ドラッカーのコンサルティングを受けた一人だ。一対一の温かな会話が随所にちりばめられており、ドラッカーの人となりがひしひしと伝わってくる。

ビュフォードは、ドラッカーから「人生をトータルに考えなさい」との助言を受けて、40歳を過ぎてからもう一つの人生を創造すべく大胆に舵を切った。そして「メガチャーチ」というネットワーク型の教会を実現したのである。ビュフォードは、「多様性の原理」で自らを養う訓練を先んじて行うことをドラッカーから学んだ。

本書には「第二の人生」を創生していくうえで必要とされる知恵がちりばめられている。中年期を迎えて今後の人生を考えている方は、一読して損はない。

それともう一つ。本書はとても大切なことを教えてくれる。それは企業も非営利組織も、求められるマネジメントの基本は変わらないということだ。

ドラッカーは、「顧客は外部の存在である」「実際に出向いていって聞いてみなければ、顧客は理解できない」と考える。それにもとづき、ビュフォードは巨大教会の設立者として著名なハイベルズに話を聞きにいった。そしてハイベルズにならい、生活者視点に立った教会を創造していく。

これは、ドラッカーのいう「マーケティング」のお手本ともいうべき行動だ。「自ら外に出ていき、話を聞く」。たったこれだけのことが、教会に行かなかった多くの人たちの集う「メガチャーチ」を大成に導いたのである。

ドラッカーの発言が高度の普遍性を備えていることがわかる事例は他にもある。ご自身の関心領域に引きつけて読んでいただきたい。

  • ドラッカー学会 Drucker Workshop