P・F・ドラッカー 理想企業を求めて

(E・イーダスハイム著、上田惇生訳/ダイヤモンド社)

 

『マッキンゼーをつくった男 マービン・バウワー』などの著書がある名コンサルタントによる、ドラッカーについての解説書である。晩年のインタビューも盛り込まれており、ドラッカーの考え方と著者自身の経験や知恵が一つの坩堝のなかで溶解した感がある。

ドラッカーを手段として使いこなそうとした先駆的な著作であり、いわば“ドラッカーの使用法”である。ドラッカー自身も、「マネジメントとは手段である」と繰り返し述べている。彼にとっては「人と社会の発展」という上位概念を除けば、あらゆるものが従の位置付けであり、手段に過ぎなかった。

本書には、すぐに役立ちそうな例がじつにたくさん出てくる。わけても情報技術を駆使し、コラボレーションに成功した企業の事例が際立っている。

一つ印象的な例を紹介したい。アルコアというアルミニウム会社の労災ゼロ宣言である。アルミニウム精錬会社は労災が頻発する職場だった。そのなかで、CEOのオニールが就任するや労災ゼロを公に表明した。

すでに同社の労災発生率は全米平均の半分以下だったという。それでも、「社会からの大切な預かりものである従業員を仕事が原因で怪我をさせるわけにはいかない」として、公約に踏み切ったのだった。

やがて労災の件数が減少し、さらには生産性が向上し業績が高まっていった。人を大切にすることと業績との間にいかなる因果関係があったかはわからない。ただそのようなことが事実として起こった、それだけで十分だとドラッカーは述べている。

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