傍観者の時代

(上田惇生訳/ダイヤモンド社)

 

ドラッカーは見えないものを見た人だった。そして、次の時代の人々の行動の原理を示した人だった。大昔からあるもののように使われる言葉、当たり前のものと見なされる概念の数々。そうしたものに名前を、生命を吹き込む不思議な哲人がドラッカーだった。

「ドラッカーはいかにしてドラッカーになったのか」。彼の生涯を俯瞰し、読み解くにあたって、本書はまたとない好材料を提供している。

本書の価値は、同時代人との交流のなかで、ドラッカー自身の中心的価値観や基本的なものの見方がいかにして生成したかを見ることができる点にある。いわば、時代を映し鏡としたドラッカーであり、知の巨人の謎を解く鍵が詰まっているのだ。

ポラニー、フロイト、マクルーハン、キッシンジャーなど、そうそうたる顔ぶれが登場し、交流のなかにさりげなくドラッカー自身の自画像が投影される。また、ナチス体制の陰惨な状況については、隠喩的な表現にとどめているものの、大いに想像力を刺激されるものとなっている。

かつてドラッカーは、ある雑誌にこう述べたことがある。

「私のマネジメントへの関心は企業経営に対するものではなく、第一次世界大戦後の文明の崩壊を端緒としていた。そして、それは企業のなかでコミュニティを創成することに関わっていた」

自らの原点について多くを語らなかったドラッカーだが、この本を読むと「語られなかった部分」がとてもよく伝わってくる。そればかりでなく、彼の人生経験やさまざまな願いが、マネジメントへの原点になっていることもひしひしと伝わってくる。

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