時間管理 

成果をあげる能力

『経営者の条件』のなかで、ドラッカーは興味深い問いかけをしている。「成果をあげる人に共通した特徴、気質、行動といったものがあるか」というものである。

ドラッカーは、さまざまな成果をあげる人々と出会い、その一人ひとりをつぶさに観察してきた。ほがらかな人もいれば、むっつりしている人もいた。社交的な人もいれば、孤独な人もいた。

結果、「成果をあげる人に共通するタイプはとくにない」という結論に達した。共通するのはただ一つ、「成果をあげる能力」を持つことのみだった。

高度な知識や技術を持つ者が、必ずしも成果をあげるとは限らない。そうした現実を見るにつけ、この「成果をあげる能力」という概念が無視できないことを実感するはずである。

時間から入る

では、「成果をあげる能力」を獲得するためには、何をすべきか。一例を挙げよう。

ドラッカーは、「私の観察によれば、成果をあげる者は仕事からスタートしない。時間からスタートする」と述べている。成果をあげる人は、「この仕事は何時間で終えられるか。そのための時間をつくれるか」をまず考えるのである。

時間という資源がいかに顧みられることがないかを、ドラッカーは再三強調する。時間とは不思議な資源である。主観的に見るならば、時間は人によって大きく伸び縮みする。また、時間の持つ意味や価値も、人によってまったく異なる。

「おそらく、時間に対する愛情ある配慮ほど、成果をあげている人を際立たせるものはない」とドラッカーは言う。時間が大切なのは、自分ひとりではない。組織社会の現代にあって、自らの時間と他者の時間に同時に目を向けなければならない。

記録する、棄てる、まとめる

企業をはじめとする組織においては、組織内の時間を浪費させている経営・人員配置・組織構造・情報システムなどがないかを、不断にモニタリングしていくことが求められる。

たとえば会議を開くときに、無関係な部署の管理職まで召集しているケースは多いだろう。そのうえ社長の独演会か、役員一人ひとりの報告会に終始しているようでは、生産性があがるはずがない。

ドラッカーが提案するのは、次のような方法である。「何月何日何時から次の趣旨の会議を開く。関係のある方、関心のある方は参加してほしい。決まったことは後日書面で報告する」。これを回覧すれば済むという。本当に関係のある者のみが会議に出席して、ほかの者は本来の業務を継続できるため、自然と生産性も高まるのだ。

一方、個人の仕事において重要なのは、自らの時間が何にとられているかを知り、体系的に時間を管理することである。成果を生まない仕事に時間をとられない。人に任せられる仕事はアウトソーシングする。これらを実践するだけでも効果がある。

そのためには第一に、時間を記録することである。「意識」するだけでなく「記録」する。第二に、時間を管理することである。しなくてもよいことはしない。人に任せられるものは任せる。第三に、自由になった時間をまとめることである。時間は細切れでは役に立てづらい。まとめることで、はじめて成果をあげるための準備が整う。

毎日行ってきた活動のなかにも、やめてもまったく困らないものがあるはずだ。誰も読んでいない報告書、だらだらとキリがないネットサーフィンなど、いったいどれくらいの時間が使われているのかを計測してみるといい。

きっぱりとやめるのが不安なら、試しに3日だけやめてみるといい。何か支障があれば再開すればいいだけのことである。

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